原材料表示は、フードについて飼い主が自力で検証できる数少ない情報だ。だが「重量順に並んでいる」という原則だけを知っていても、読み解けることは意外に少ない。いつの時点の重量なのか。「ミール」と「副産物」は何が違うのか。製品名に肉の名前が入る条件は何か。公的な定義に沿って、順番に押さえる。

先に結論(TL;DR)

押さえるべきは4つ。(1)重量順は「加工前の重量」で決まるため、水分の多い生肉は上位に来やすい。(2)「ミール」は水分を除いて粉にしたもの、「副産物」は肉以外の可食部位で、いずれもAAFCOに公的な定義がある。(3)製品名には95%・25%・3%・「風味」という4段階のルールがあり、名前に肉が入っていても配合率は名乗り方で大きく変わる。(4)保証成分値は最低4項目で、しかも「以上/以下」の表示であり実測値ではない。

原則:重量順、ただし「加工前」の重量

AAFCOの消費者向けガイダンスは明快だ。「すべての原材料は重量の降順で表示されなければならない」。EUのFEDIAF(欧州ペットフード工業連合)の表示規範も同様に、飼料原料は重量の降順で列記するとしている。

問題はここからだ。この重量は加工前の状態で計られる。そして生肉はおよそ70〜75%が水分である。

なぜ「生肉が1番目」でも安心できないのか

生肉100gを投入すると、加熱・乾燥の工程で水分が抜け、完成品への寄与は30g前後まで落ちる。一方、あらかじめ水分を除いた「ミール」100gは、そのまま100g近くが完成品に残る。つまり原材料表示の1番目が生肉であっても、完成した粒の中での比率は、表示の順番が示唆するほど高くないことがある。この換算のずれは、表示ルールそのものに由来する構造的なものだ(→ミートミールと生肉は何が違うのか)。

重量順は「加工前の重量」の順。水分を多く含む原料ほど上位に来やすい。順番は事実だが、完成品の構成比とは別物である。
日本では「重量順」は法的な義務ではない

ここは日本の飼い主にとって重要な差分だ。ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律。環境省・農林水産省の共管、2009年6月1日施行)が義務づける表示は①名称(犬用・猫用の別が分かること)②賞味期限 ③原材料名(添加物を含む) ④原産国名 ⑤事業者の氏名または名称および住所の5項目。このうち原材料名について、法令は並べる順序そのものを明示的に義務づけていない。実務上は多いものから順に記載することが一般的だが、EUや米国のように「降順で表示しなければならない」と規定されているわけではない。%の併記も義務ではない。日本語表示だけを見て「1番目がいちばん多い」と当然に読めるとは限らない——この前提の差は押さえておきたい。

「ミール」「副産物」「肉」── AAFCOの定義

これらは印象で語られやすい言葉だが、いずれも公的な定義がある。定義に戻って読む。

用語 AAFCOの定義(要旨)
Meat(肉) と畜された哺乳動物に由来する清浄な肉。骨格筋に限られるほか、心臓・舌・横隔膜に見られる筋肉を含む
Meat Meal(ミートミール) 哺乳動物の組織をレンダリング(加熱・脱脂・乾燥)した製品。血液・毛・角・皮のトリミング・糞・胃と第一胃の内容物を加えたものは除く
Meat By-products(肉副産物) と畜された哺乳動物に由来する、肉以外の清浄な部位(レンダリングしていないもの)
Poultry(家禽肉) 肉と皮の組み合わせ。骨を含みうるが、羽・頭・脚・内臓は含まない
Poultry Meal / Chicken Meal 家禽から水分を除いてレンダリングしたもの。筋肉・皮・骨を含みうる
Poultry By-product Meal と畜された家禽の枝肉の清浄な部位(首・脚・未発育卵・腸など)を挽いてレンダリングしたもの。羽は、良好な加工工程で不可避的に混入する量を除いて含まない

定義を読むと、いくつかの誤解が解ける。「副産物」は「くず肉」や「粗悪品」を意味する言葉ではなく、「骨格筋以外の可食部位」を指す分類名だ。内臓には栄養素が濃縮されている部位もあり、栄養学的な良し悪しは部位の構成によって決まる。逆に、定義上「羽・頭・脚」が入らないはずの表記であっても、それが品質の保証になるわけではない。定義が教えてくれるのは「何が含まれうるか」の範囲であって、実際の質ではない。

EUの「カテゴリー表示」という別の書き方

FEDIAFの表示規範では、個別の原料名を列記する方法に加えて、「肉および動物由来製品(meat and animal derivatives)」のようなカテゴリー名でまとめる方法が認められている。カテゴリー表示を選んだ製品では、個々の原料が何かは表示から分からない。ただし特定の原料(例:牛肉)をラベルで強調する場合は、「肉および動物由来製品(牛肉◯%)」のように比率を併記する必要がある。強調表示と%の併記はセットになっている、という構造だ。

製品名のルール ── 名前に肉が入る条件

ここは知っておくと表示の見え方が変わる。AAFCOは製品名の付け方に4段階のルールを置いている。

ルール 名乗り方の例 必要な配合率
95%ルール 「ビーフ ドッグフード」 加工用の水を除いて95%以上(水を含めても70%以上)
25%ルール(ディナー) 「チキン ディナー」「〜エントレ」 加工用の水を除いて25%以上(水を含めて10%以上)
3%ルール(with) 「チキン入り」「with chicken」 3%以上
風味(flavor)ルール 「ビーフフレーバー」 配合率の下限なし。その風味を与える原料が表示されていることが条件

同じ「チキン」という言葉でも、「チキン ドッグフード」と「チキン入りドッグフード」では、要求される配合率が95%と3%で30倍以上違う。肉の名前があるかどうかではなく、その名前がどの助詞・どの語とつながっているかを読む。これは米国のルールだが、名乗り方と実際の配合率が乖離しうるという構造は、表示を読むうえで普遍的な注意点になる。

「分割表示」という読みにくさ

もうひとつ、順番だけでは見抜きにくい構造がある。同じ系統の原料を細かく分けて記載すると、それぞれの重量が小さくなり、表示上の順位が下がる。

たとえば豆類

「えんどう豆」「えんどう豆タンパク」「えんどう豆繊維」「えんどう豆でんぷん」が別々に並んでいる場合、個々は3番目・5番目・7番目でも、合計すれば1番目の原料を上回る可能性がある。表示ルールに違反しているわけではないが、順番だけを見ていると全体像を取り違える。同じ系統の名前が散らばっていないか——これは表示を見るときの実用的なチェックになる(→グレインフリーの炭水化物源)。

保証成分値は、何を保証しているのか

原材料表示と並ぶもう一つの情報が保証成分値だ。AAFCOの規定では、最低限粗タンパク質の最小値、粗脂肪の最小値、粗繊維の最大値、水分の最大値の4項目が要求される。

ここで見落とされやすい点が2つある。第一に、これらは「以上」「以下」の表示であって実測値ではない。「粗タンパク質28%以上」の実測値が31%であることも、28.2%であることもある。第二に、粗タンパク質は窒素量から換算した推定値であり、アミノ酸組成や消化率までは表さない(→「タンパク質37%」を読み解く、→ドッグフードの「消化率」はどう測るか)。

実際に見るときの順番

順 見るところ 読み取れること
1 製品名の語尾(「〜フード」か「〜入り」か「〜風味」か) 名乗りに必要な最低配合率
2 原材料の1〜5番目 主要な構成。生肉かミールかで水分の扱いが変わる
3 同系統の原料が分かれていないか 合計としての比率
4 %が併記されている原料はどれか 唯一、量が確定できる情報
5 保証成分値の4項目 下限・上限としての栄養値
6 栄養基準の適合表示(総合栄養食か) どのライフステージ向けか

結論

原材料表示は「順番に並んでいる」だけの情報ではない。重量順は加工前の重量で決まり、ミール・副産物・肉には公的な定義があり、製品名には配合率のルールが紐づいている。そして%が併記された原料だけが、量として確定できる情報だ。表示から読み取れることには限界がある——その限界の位置を知っていることが、表示を正しく使うということだ。読めないものを読めたつもりにならない。それが原材料表示との正しい付き合い方になる。

FINEPET’S では、原材料の構成と保証成分値を製品ページで公開しています。この記事の6つの手順に沿って、そのまま確かめられます。

FINEPET’S の原材料表示を見る →

よくある質問(FAQ)

Q. 原材料の1番目が「生肉」なら良いフードですか?

そう単純には言えません。原材料は加工前の重量順に並びますが、生肉はおよそ70〜75%が水分で、加熱・乾燥後の寄与は大きく減ります。一方で水分をあらかじめ除いたミールは、投入量に近い量が完成品に残ります。1番目が生肉でも、完成した粒の中での比率は表示の順番が示唆するほど高くないことがあります。

Q. 「副産物」は品質が低いという意味ですか?

いいえ。AAFCOの定義では、肉副産物は「と畜された哺乳動物に由来する、肉(骨格筋)以外の清浄な部位」を指す分類名です。内臓には栄養素が濃縮されている部位もあり、栄養学的な良し悪しは実際の部位構成によります。定義が示すのは「何が含まれうるか」の範囲であって、品質そのものではありません。

Q. 製品名に肉の名前が入っていれば、たくさん入っているのですか?

名乗り方によって必要な配合率が変わります。AAFCOのルールでは、「ビーフ ドッグフード」のような名称は加工用の水を除いて95%以上、「チキン ディナー」のような表現は25%以上、「チキン入り(with chicken)」は3%以上、「ビーフフレーバー」は配合率の下限がなくその風味を与える原料が表示されていることが条件です。同じ肉の名前でも要求水準は大きく異なります。

Q. 保証成分値は実際の分析値ですか?

いいえ。粗タンパク質と粗脂肪は最小値、粗繊維と水分は最大値としての表示で、実測値とは一致しません。また粗タンパク質は窒素量から換算した推定値であり、アミノ酸組成や消化率までは表しません。数字を比較するときは「以上/以下」の表示であることを前提に読む必要があります。

参考文献

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