秋になると抜け毛が増える。掃除機をかける回数が増えて、はじめて季節の変わり目を実感する人も多い。換毛そのものは自然な現象だが、毛をつくる材料は食事から来る。毛と皮膚に関わる栄養素を、公的な基準値を交えて整理する。
毛は主にタンパク質(ケラチン)でできており、皮膚のバリアには脂質が関わる。AAFCOの犬用栄養基準では、必須脂肪酸であるリノール酸について成犬・維持期で1.1%以上、成長期・繁殖期で1.3%以上(乾物換算)が定められている。オメガ6とオメガ3の比率にも上限の考え方があり、AAFCOは30:1未満、NRCは成犬で2.6〜26の範囲を示す。換毛期に特別なものを足すより、総合栄養食を規定量きちんと食べていることのほうが土台になる。
換毛は、なぜ起きるのか
犬の毛の生え替わりは、主に日照時間の変化が引き金になると考えられている。気温よりも「日が短くなる/長くなる」という光の周期が効くため、春と秋に集中する。室内で暮らす犬では照明の影響もあり、一年を通じて少しずつ抜けるパターンになることもある。
つまり換毛期の抜け毛そのものは、異常ではない。見るべきは「抜ける量」ではなく「生えてくる毛の状態」と「皮膚の見え方」だ。
毛をつくる材料 ── タンパク質
毛の主成分はケラチンというタンパク質だ。換毛期は新しい毛を大量につくる時期にあたるため、材料としてのタンパク質とアミノ酸の供給が前提になる。
とはいえ、ここで「だからタンパク質を増やす」と短絡しないほうがいい。総合栄養食として設計されたフードを規定量食べていれば、必要量は満たされる設計になっている。AAFCOの基準では成犬・維持期で粗タンパク質18.0%以上(乾物換算)が最低量で、市販のフードの多くはこれを上回る(→犬のライフステージ別タンパク質要求量)。
皮膚に関わる脂質 ── 数値が定められている栄養素
必須脂肪酸は、犬が体内で十分に合成できないため食事から摂る必要がある脂肪酸だ。公的な基準に数値がある、数少ない領域でもある。
| 項目 | 基準値 | 出典 |
|---|---|---|
| リノール酸(オメガ6) 成犬・維持期 |
1.1%以上(乾物換算) | AAFCO 犬用栄養基準 |
| リノール酸(オメガ6) 成長期・繁殖期 |
1.3%以上(乾物換算) | AAFCO 犬用栄養基準 |
| オメガ6:オメガ3 比 | 30:1 未満 | AAFCO |
| リノール酸:α-リノレン酸 比 (成犬) |
2.6〜26 の範囲 | NRC 2006 |
比率に「上限」の考え方があるのが特徴的だ。オメガ6だけを増やせばよいという設計ではない、ということを基準そのものが示している。脂肪酸の役割の詳細は、11月のレポートで扱う(→オメガ3・オメガ6比率、→オメガ3とオメガ6)。
換毛期に、飼い主ができること
| できること | 中身 |
|---|---|
| 規定量を守る | 体重と活動量に合った給与量を確認する。減らしすぎは材料不足につながる |
| ブラッシング | 抜け毛を物理的に取り除く。皮膚の状態を観察する機会にもなる |
| フードの鮮度を保つ | 脂質は酸化しやすい。保管条件は品質に直結する(→開封後酸化と保管) |
| 水を飲める環境 | 器の数と置き場所を見直す |
| 変化を記録する | 抜け方・皮膚の見え方・かゆがる様子を日付とともにメモしておく |
換毛期の抜け毛と、そうでないものは区別したい。左右対称に地肌が見えるほど脱毛している/同じ場所を舐め続ける・掻き続ける/皮膚が赤い、におう、フケが急に増えた/季節と無関係に続いている——こうした場合は、食事の調整で様子を見るのではなく、動物病院で相談してください。皮膚の状態は原因が多岐にわたり、食事以外の要因であることも珍しくありません。
結論
換毛期は、体が新しい毛をつくる時期だ。毛の材料はタンパク質であり、皮膚のバリアには脂質が関わる。そしてこれらは、総合栄養食を規定量食べることで満たされるように設計されている。足し算より先に、いま食べている量が適正かを確認する。抜け毛の季節にできることは、案外そこに集約される。
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よくある質問(FAQ)
総合栄養食を規定量食べているなら、換毛期だからという理由で変える必要は基本的にありません。毛の材料であるタンパク質も、皮膚に関わる必須脂肪酸も、栄養基準を満たすフードには含まれています。むしろ確認したいのは給与量です。体重と活動量に対して量が足りていないと、材料そのものが不足します。
あります。AAFCOの犬用栄養基準では、リノール酸(オメガ6)について成犬・維持期で1.1%以上、成長期・繁殖期で1.3%以上(いずれも乾物換算)が定められています。またオメガ6とオメガ3の比率については、AAFCOが30:1未満、NRC 2006が成犬でリノール酸:α-リノレン酸2.6〜26の範囲を示しています。
左右対称に地肌が見えるほど脱毛している、同じ場所を舐め続ける・掻き続ける、皮膚が赤い・においがある・フケが急に増えた、季節と無関係に続いている——こうした場合は動物病院で相談してください。皮膚の状態は原因が多岐にわたり、食事以外の要因であることも珍しくありません。
参考文献
- Association of American Feed Control Officials (AAFCO). AAFCO Dog and Cat Food Nutrient Profiles(リノール酸の最低量、オメガ6:オメガ3比の上限). https://www.aafco.org/
- National Research Council. Nutrient Requirements of Dogs and Cats. National Academies Press, 2006(リノール酸:α-リノレン酸比の範囲). https://nap.nationalacademies.org/catalog/10668/nutrient-requirements-of-dogs-and-cats