昨日まで完食していた子が、今日は半分残した。すぐに「フードが合わなくなった」と考えたくなるが、その前に見るところがある。順番に確認していけば、原因の見当がつくことは多い。フードを変えるのは、いちばん最後でいい。
見る順番は①フードの状態 → ②与えている総量 → ③環境の変化 → ④器と食べる場所 → ⑤体調。①〜④は家で確認できる。⑤に当てはまるサインがあれば、そこで止めて動物病院へ。フードそのものを変える判断は、①〜④を潰してからで遅くない。
① フードの状態 ── 開封からどれくらい経ったか
最初に疑うべきはここだ。ドライフードは開封後、脂質の酸化が進む。保存試験では、酸化が進んだ試料でにおいの評価が変わり、飼い主による受容性の評点も有意に低下することが観察されている(→ドライフードの開封後酸化と保管)。人が気づかない程度のにおいの変化を、犬が先に検知している可能性は十分にある。
| 確認すること | 目安 |
|---|---|
| 開封からの日数 | 製品の表示に照らして長すぎないか |
| 保管場所 | 直射日光・コンロ脇・高温になる場所を避けているか |
| 容器 | 継ぎ足していないか。底に古い粉と油が残っていないか |
| 新しい袋を開けた直後か | ロットが変わった直後は、粒の色や香りに差が出ることがある |
試し方:未開封の新しい袋から少量出して、同じ器で与えてみる。それで食べるなら、原因はフードの銘柄ではなく保管にある。
② 与えている総量 ── おやつとトッピングを足して数える
「フードを食べない」のではなく「もう足りている」だけ、という場合がある。おやつ、しつけ用のごほうび、家族の誰かがあげた分、トッピング——これらを合計すると、想定よりかなり多いことがある。
紙でもスマホのメモでもいい。1日に口に入ったものを、家族全員分まとめて書き出す。「誰が何をあげたか分からない」状態は、多頭・多人数の家庭で驚くほどよく起きる。書き出すだけで原因が判明することがある。給与量の考え方は別記事で扱っている(→ドッグフードのカロリー計算)。
また、トッピングを続けていると、それが乗っていないと食べなくなることがある。これは嗜好の学習であって、フードの問題ではない。
③ 環境の変化 ── 直前の1週間に何があったか
犬は環境の変化に食欲が影響されやすい。引っ越し、模様替え、来客、家族の生活リズムの変化、同居動物が増えた、工事の音、季節の変わり目。直前1週間を振り返ると、思い当たることが見つかることがある(→ストレスと食事)。
環境が原因の場合、多くは時間の経過とともに落ち着く。ここで慌ててフードを変えると、「変えたから食べた/食べない」の判断がつかなくなる。変数は増やさない。
④ 器と食べる場所 ── 物理的な条件を疑う
| 見るところ | ありがちな原因 |
|---|---|
| 器の高さ | 低すぎて姿勢がつらい。シニアや大型犬では影響が出やすい |
| 器の素材・深さ | 金属の音を嫌う、深すぎてヒゲが当たる |
| 置き場所 | 人の動線上で落ち着かない、洗濯機や冷蔵庫の音が近い |
| 他の動物の視線 | 見られていると食べない。多頭飼いでは場所を分ける(→複数飼いの食事管理) |
| 器の洗い方 | 油膜が残ってにおう。洗剤の香りが強い |
器を変えただけ、置き場所を移しただけで食べるようになることは、実際にある。お金のかからない変数から順に試すのが合理的だ。
⑤ 体調 ── ここに当てはまったら病院へ
・2日以上ほとんど食べない
・嘔吐や下痢をともなう
・体重が落ちてきた
・水を飲む量、尿の量が明らかに変わった
・食べたそうにするのに口をつけない、途中で落とす、片側だけで噛む
・元気がない、いつもの反応がない
・歯ぐきの色が薄い、口のにおいが強くなった
これらに当てはまる場合は、フードの調整で様子を見ずに動物病院で相談してください。とくに「食べたいそぶりはあるのに食べない」は、口の中や歯の状態が関わっていることがあります(→歯と歯みがき・フードの関係)。
猫の場合はさらに注意が必要で、食べない状態が続くこと自体が体に負担になる。犬より早めに相談したい。
順番に潰したあとで
①〜④を確認して、⑤に当てはまるサインもない。そのうえでやはり食べない——という段階になって初めて、フードそのものの見直しを考える。その場合も、切り替えは段階的に行う(→フードを切り替える7日間)。
FINEPET’S では、保管方法と給与量の目安を製品情報とあわせて掲載しています。まずはいまの条件を確認するところから。
よくある質問(FAQ)
順番は、①フードの状態(開封からの日数・保管条件・容器の継ぎ足し)、②おやつを含めた1日の総量、③直前1週間の環境の変化、④器の高さや置き場所、⑤体調です。①〜④は家で確認できます。未開封の新しい袋から少量出して同じ器で与えてみると、保管が原因かどうかを切り分けられます。
おすすめしません。フードを変えると「変えたから食べた/食べない」の判断がつかなくなり、原因が分からなくなります。保管・総量・環境・器という確認できる要素を先に潰してください。見直す場合も、切り替えは7日程度かけて段階的に行います。
2日以上ほとんど食べない、嘔吐や下痢をともなう、体重が落ちてきた、水を飲む量や尿量が明らかに変わった、食べたそうにするのに口をつけない・途中で落とす、元気がない、歯ぐきの色が薄い——こうした場合は食事の調整で様子を見ず、動物病院で相談してください。猫は食べない状態が続くこと自体が負担になるため、犬より早めの相談が安全です。
参考文献
- Chanadang S, Koppel K, Aldrich G. “The Impact of Rendered Protein Meal Oxidation Level on Shelf-Life, Sensory Characteristics, and Acceptability in Extruded Pet Food.” Animals (Basel). 2016;6(8):44. doi:10.3390/ani6080044. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4997269/
- 農林水産省「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」表示基準. https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/